三重県伊勢市内の「ゼロ距離水族館 伊勢シーパラダイス」では、絶滅危惧種とされるノコギリエイを一般公開している。
飼育年数が38年もの長期にわたる、世界的にも極めて希少な長期飼育個体だ。
ノコギリ状の吻の標本で給餌解説予定
「ゼロ距離水族館 伊勢シーパラダイス」は、一部展示エリアの見直しに伴って、ノコギリエイの展示を非公開とし、慎重にバックヤードで飼育を継続してきた。よりよい環境が整ったことにより、2025年12月13日(土)より一般公開を再開している。展示場所は伊勢シーパラダイス館内水槽だ。
“ゼロ距離体験”がコンセプトの体感型水族館のため、水族館側は今回の展示を単なる再開にとどめず、生物多様性や保全の重要性を伝える役割を果たしていくとしている。
また、ノコギリエイ最大の特徴で名前の由来にもなっている「ノコギリ状の吻(ふん)」の標本を用いて行う「給餌解説」を、実際の給餌時間に合わせて実施予定。
ノコギリエイは、この長い吻を泳いでいる魚を打ち落としたり、砂を掘り起こしたりする際に使っている。
試行錯誤の末に長期飼育を実現
展示個体は、1987年9月18日(金)に来館したオオノコギリエイ(Pristis pristis)。搬入時の体長から年齢は約38歳と推定されており、飼育下としては世界的にも高齢クラスの可能性があるという。性別はメスで、来館当初はペアで飼育されていたものの、12月時点ではこの一個体のみ。
来館当時、国内でのノコギリエイの飼育記録は100日未満とされており、「極めて飼育が難しい種」として知られていた。水族館が飼育管理や給餌方法の研究・試行錯誤を重ねた結果、長期飼育を実現したという。なお、12月時点の体長は約3.5m、体重は約75kgで、食欲や行動に問題はなく、良好な状態で過ごしているとのこと。
生きたノコギリエイを見られる貴重な機会
ノコギリエイの生息地は、南西諸島からオーストラリア北部にかけての熱帯域。かつて、日本近海にも2種のノコギリエイが生息していたものの、日本ではいずれも絶滅したと考えられている。
ノコギリエイの生息数は世界的にも急激に減少しており、ノコギリエイ科は国際的に絶滅危惧種として保護対象となっているそう。ラッコなどと同様に、今後日本に新たな個体が入ることは非常に困難な状態で、今回の一般展示は貴重な機会といえるだろう。
「ゼロ距離水族館 伊勢シーパラダイス」は、ノコギリエイの他にも、ゼロ距離の名の通り、セイウチやゴマフアザラシ、ペンギン、カワウソなどを目の前で感じられる展示も魅力だ。
この機会に、「ゼロ距離水族館 伊勢シーパラダイス」へ足を運んでみては。
■ゼロ距離水族館 伊勢シーパラダイス
所在地：三重県伊勢市二見町江580
営業時間：9:30～17:00(最終入場16:30) ※季節変動あり
入館料：大人2,400～2,800円(大人料金は日によって変動あり)、小中学生1,200円、幼児(4才以上)600円
公式HP：https://ise-seaparadise.com
(山崎正和)
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